業務委託に残業代や有給休暇はある?よくある誤解を社労士が解説

近年、働き方の多様化により、業務委託契約で仕事をする方が増えています。

その中でよくいただくご相談が、

「業務委託でも残業代はもらえるのでしょうか?」
「有給休暇は取得できますか?」

というものです。

結論から申し上げると、本来の業務委託契約であれば、残業代や年次有給休暇は発生しません。

しかし、実際の働き方によっては、業務委託ではなく「労働者」と判断されることがあります。その場合には、残業代や有給休暇を請求できる可能性があります。

今回は、業務委託と残業代・有給休暇の関係について、分かりやすく解説します。

目次

業務委託には労働基準法が適用されません

まず知っておきたいのは、業務委託契約と雇用契約は全く異なる契約であるということです。

会社に雇用されている従業員には労働基準法が適用されます。

そのため、

・残業代
・年次有給休暇
・休憩時間
・休日
・深夜割増賃金

など、さまざまな権利が法律によって保障されています。

一方、業務委託契約は会社と対等な立場で仕事を請け負う契約です。

仕事の完成や成果に対して報酬を受け取る契約であるため、原則として労働基準法の適用はありません。

つまり、法律上は残業代や有給休暇という考え方自体が存在しないのです。

業務委託に残業代はありません

「夜遅くまで仕事をしたから残業代をください。」

本来の業務委託契約では、このような請求は認められません。

なぜなら、業務委託では会社が労働時間を管理しているわけではないからです。

例えば、仕事を早く終わらせても報酬は変わりませんし、逆に時間がかかったとしても、それだけで追加の報酬が発生するわけではありません。

業務委託では、「何時間働いたか」ではなく、「どのような仕事を行ったか」「どのような成果を出したか」が基本となります。

そのため、夜遅くまで仕事をしたとしても、それだけを理由に残業代が発生することはありません。

有給休暇も原則としてありません

年次有給休暇は、労働基準法によって労働者へ認められている制度です。

そのため、業務委託契約には有給休暇という制度はありません。

例えば、旅行へ行くために一週間仕事を休んだとしても、その期間の報酬が保証されるわけではありません。

また、体調不良で仕事ができなかった場合でも、会社が給与を支払う義務はありません。

これは会社が冷たいという話ではなく、業務委託契約そのものが「働いた時間」に対して報酬を支払う契約ではないためです。

自由に仕事を調整できる反面、自分自身で収入を管理する必要があります。

それでも残業代や有給休暇が認められるケースがあります

ここで最も注意したいのが、「契約書には業務委託と書いてあるけれど、実際は従業員と変わらない」というケースです。

例えば、

・毎日決まった時間に出勤している
・会社のタイムカードで勤怠管理されている
・仕事を自由に断れない
・会社から細かく仕事を指示される
・他社の仕事を禁止されている

このような働き方をしている場合には、実態として労働者と判断される可能性があります。

そして労働者と判断されれば、今まで支払われていなかった残業代や、有給休暇の権利が認められることがあります。

「契約書は業務委託だから大丈夫」と考えている企業ほど注意が必要です。

過去の裁判でも「実態」が重視されています

この考え方は、過去の裁判でも繰り返し示されています。

代表的なのが、横浜南労基署長(旭紙業)事件です。

この事件では、契約上は個人事業主となっていた方が、労働者に該当するかどうかが争われました。

最高裁判所は、契約書の名称だけではなく、実際の働き方を総合的に見て判断すべきであるという考え方を示しています。

つまり、「業務委託契約だから残業代は発生しない」

ではなく、「本当に業務委託として働いているのか」

が重要なのです。

契約書よりも実態が重視されるという点は、多くの経営者に知っていただきたいポイントです。

トラブルは契約終了後に起こることが多い

業務委託契約では、契約中は問題なく仕事が進んでいたとしても、契約終了後にトラブルになるケースが少なくありません。

契約終了後に、

「実際は従業員として働いていた」

と主張され、

・未払い残業代
・年次有給休暇
・社会保険
・雇用保険

などを請求されるケースがあります。

一度労働者性が認められると、数年分の残業代が問題になることもあり、企業にとっては大きな負担となる可能性があります。

だからこそ、契約書を作るだけではなく、日頃の運用まで見直すことが重要です。

業務委託契約を結ぶ際のチェックポイント

業務委託契約を締結する際は、次のような点を確認しておくことをおすすめします。

・勤務時間を会社が管理していないか

・仕事を受けるかどうか本人が選べるか

・仕事の進め方を本人の裁量に任せているか

・報酬が時間ではなく業務内容や成果に対して支払われているか

・他社との取引を不当に制限していないか

これらが従業員と変わらない運用になっている場合は、一度契約内容を見直した方がよいでしょう。

まとめ

業務委託契約では、原則として残業代や年次有給休暇は発生しません。

しかし、契約書が業務委託になっていても、実際の働き方が従業員と変わらなければ、労働者と判断される可能性があります。

その結果、未払い残業代や有給休暇の問題だけでなく、社会保険や雇用保険など、さまざまな労務トラブルへ発展することもあります。

業務委託契約を活用する際は、「契約書を作ったから安心」ではなく、実際の働き方まで含めて確認することが重要です。

さいたま市にある社会保険労務士渡邉事務所では、業務委託契約書の作成・チェックだけでなく、実際の運用状況を踏まえた労働者性の確認や労務リスクの診断も行っています。

「現在の契約内容で問題ないだろうか」「残業代や有給休暇のトラブルを防ぎたい」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。

サービスに関するご相談・お見積りのご依頼は
下記より気軽にお問合せください

業務委託でも残業代を請求できますか?

原則として請求できません。業務委託契約には労働基準法が適用されないため、残業代という考え方はありません。ただし、実態が労働者と判断された場合は、残業代を請求できる可能性があります。

業務委託でも有給休暇は取得できますか?

原則として取得できません。年次有給休暇は労働基準法で労働者に認められている制度であり、業務委託契約には適用されません。

業務委託なのに勤務時間が決まっている場合は問題ですか?

勤務時間を会社が厳しく管理している場合は、労働者性が認められる要素の一つとなる可能性があります。他の事情も含めて総合的に判断されます。

契約書に「業務委託」と書かれていれば安心ですか?

いいえ。契約書の名称だけでは判断されません。実際の働き方が会社の指揮命令下にある場合は、業務委託ではなく労働者と判断されることがあります。

業務委託契約を結ぶ際に一番注意すべきことは何ですか?

契約書の内容だけでなく、実際の運用が契約内容と一致していることです。勤務時間の管理や仕事の指示方法などが従業員と変わらない状態になっていないか、一度確認することをおすすめします。

この記事を書いた人

社会保険労務士 渡邉事務所
渡邉拓弥

渡邉事務所代表。さいたま市を中心に助成金申請・労務管理・就業規則・障害年金など中小企業をサポート。

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