会社を経営していくうえで、就業規則は欠かせないものです。
従業員の労働時間や休日、賃金、退職などのルールを明確にすることで、労使トラブルを未然に防ぐ役割があります。
しかし、就業規則を作成しただけで安心してしまっている会社も少なくありません。
就業規則を作ってもらったから大丈夫」
届け出ているから問題ない」
このように考えている経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
実は、就業規則は作成しただけでは十分とはいえません。
今回は、就業規則を作成した後に会社が注意しておきたい3つのポイントについて解説します。
1.就業規則と実際の運用が違っていませんか?
就業規則に関するご相談で、特に注意が必要なのが「規程と実態の不一致」です。
例えば、次のようなケースです。
- 就業規則では始業時刻が9時なのに、実際には8時30分から朝礼を行っている
- 賞与は会社の業績や勤務成績等を考慮して支給すると定めているが、実際の運用では別の基準を使っている
- 残業は事前申請制としているが、実際には申請なしの残業が常態化している
- 休職制度はあるものの、休職期間や復職の判断基準が曖昧なまま運用されている
こうした状態が続くと、いざ従業員との間でトラブルが発生した際に、就業規則が十分に機能しない可能性があります。
例えば、就業規則で始業時刻を9時と定めていても、会社が8時30分からの朝礼への参加を義務付けている場合、その朝礼時間は労働時間に該当する可能性があります。
この場合、就業規則に9時始業と書いてあることだけを理由に、朝礼時間の賃金を支払わなくてよいわけではありません。
また、残業の事前申請制を設けていても、会社が実際の残業を把握しながら黙認していた場合には、申請がないことだけを理由に残業代の支払いを拒めるとは限りません。
就業規則を確認する際には、条文を読むだけではなく、日々の勤怠管理や給与計算、休暇の取得状況なども合わせて確認する必要があります。
2.就業規則を従業員に周知していますか?
就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出れば、それで手続きは完了したと思われがちです。
しかし、もう一つ忘れてはいけないのが、従業員への周知です。
労働基準法第106条では、就業規則を労働者に周知することが義務付けられています。
具体的な周知方法としては、次のようなものがあります。
- 事業場内の見やすい場所に掲示する
- 従業員が自由に閲覧できる場所に備え付ける
- 書面で従業員に交付する
- 社内システムなどで、従業員が必要なときに確認できる状態にする
ここで注意したいのが、「会社に就業規則があること」と「従業員が就業規則を確認できること」は別だという点です。
例えば、就業規則を社長のパソコンに保存しているだけで、従業員が自由に閲覧できない状態では、適切に周知されているとはいえません。
また、入社時に就業規則の存在だけを伝え、その後は従業員が確認できないような運用も問題となります。
労働契約法第7条では、合理的な労働条件を定めた就業規則を労働者に周知していた場合、原則としてその就業規則で定める労働条件が労働契約の内容となることが規定されています。
つまり、周知は単なる形式的な手続きではなく、就業規則の効力を考えるうえでも重要な意味を持っています。
会社を守るために作成した就業規則が、必要な場面で十分に機能しないことがないよう、従業員がいつでも確認できる環境を整えておきましょう。
3.就業規則を何年も見直していませんか?
就業規則は、一度作成すれば何年もそのままでよいというものではありません。
労働関係法令は毎年のように改正されています。
また、会社の規模が大きくなったり、新しい雇用形態を導入したりすることで、必要な社内ルールも変わっていきます。
例えば、次のような場合には見直しを検討したいところです。
- 育児・介護休業に関する法改正があった
- 定年や継続雇用制度を変更した
- テレワークやフレックスタイム制を導入した
- 正社員以外に短時間正社員や有期契約社員を雇用するようになった
- 休職や復職に関する相談が増えてきた
- 賃金制度や各種手当の支給基準を変更した
例えば、以前は正社員しかいなかった会社が、事業拡大に伴ってパート社員や契約社員を採用するようになったとします。
その場合、従来の正社員向け就業規則だけでは、雇用形態ごとの労働条件を十分に整理できていない可能性があります。
また、育児・介護休業制度などは法改正が続いているため、数年前に作成した規程では現在の法律に対応できていない場合もあります。
ただし、少なくとも年に1回程度は、法改正への対応状況と実際の運用に問題がないか確認することをおすすめします。
4.就業規則は会社を守るためのもの
就業規則というと、従業員のためのルールという印象を持たれるかもしれません。
もちろん、従業員が安心して働ける環境を整える役割もありますが、会社を守るという意味でも非常に重要です。
例えば、従業員が無断欠勤を繰り返した場合や、会社のルールに違反した場合を考えてみましょう。
会社としては注意や指導を行い、改善が見られなければ懲戒処分などを検討することもあるかと思います。
しかし、懲戒処分を行うためには、就業規則上の根拠があることに加え、処分の内容が客観的に合理的で、社会通念上相当であることなどが求められます。
「社長が問題だと思ったから処分する」という判断では、後々トラブルになる可能性があります。
また、休職や復職についても同様です。
休職期間をどの程度設けるのか、復職の可否をどのように判断するのか、休職期間満了時にはどう取り扱うのか。
こうしたルールが曖昧なままでは、従業員への対応に迷いが生じやすくなります。
問題が起きる前にルールを整理し、実際の運用まで整えておくことが、会社を守ることにつながります。
5.就業規則を見直す際に確認したいポイント
就業規則の見直しというと、法律に違反している箇所がないかを確認する作業をイメージされるかもしれません。
しかし、それだけでは十分ではありません。
実際には、会社の働き方や給与計算なども含めて確認することが大切です。
具体的には、次のような項目を確認してみてください。
- 就業規則と実際の労働時間・休日・休暇の運用が一致しているか
- 雇用契約書や労働条件通知書と矛盾していないか
- 固定残業代や各種手当の規定と給与計算が一致しているか
- 休職・復職・懲戒・退職のルールが明確になっているか
- 法改正に対応できているか
- 従業員が就業規則を自由に閲覧できる状態になっているか
一方、常時10人未満の事業場では法律上の作成・届出義務はありませんが、労使トラブルを防ぐ観点から就業規則を整備しておくことは有効です。
まとめ|就業規則は「作って終わり」にしないことが大切
就業規則は、会社と従業員が共通のルールのもとで働くための大切なものです。
しかし、どれほど立派な就業規則を作成しても、実際の運用と異なっていたり、従業員に周知されていなかったりすれば、その役割を十分に果たせません。
特に、数年間就業規則を見直していない会社や、従業員数が増えてきた会社では、一度確認してみることをおすすめします。
さいたま市にある社会保険労務士 渡邉事務所では、就業規則の新規作成や改定だけでなく、実際の勤怠管理・給与計算・社内制度との整合性を踏まえた見直しをサポートしております。
「以前作った就業規則をそのまま使っている」「今の運用に合っているか分からない」といった場合も、お気軽にご相談ください。
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