「うちは小さい会社だから、雇用契約書までは…」
「口頭で条件は伝えてるし大丈夫でしょ?」
こうしたお話は、現場で本当によくあります。
ですが結論から言うと、労働条件通知書(雇用契約書)を交付していない状態は、会社にとってかなり危険です。
大きなトラブルになってから整備しても遅く、最悪の場合は「未払い残業代の請求」や「解雇トラブル」「労基署対応」に発展することもあります。
この記事では、労働条件通知書を出していないと何が起こるのか、社労士の視点でわかりやすく解説します。
そもそも労働条件通知書とは?
労働条件通知書とは、会社が労働者を雇う際に、労働条件(給与・労働時間・休日など)を明示するための書面です。
労働基準法では、雇い入れの際に労働条件を明示する義務があります。
このうち特に重要な項目(後述)は、書面で交付しなければならないと定められています。
簡単に言うと、労働条件通知書は「言った・言わない」を防ぐための会社側の防御装置です。
労働条件通知書を出していないと起こること①:労基署から是正勧告の対象になる
労働条件通知書の未交付は、労働基準法違反となります。
たとえば、従業員が退職時に「条件が違う」と労基署に相談した場合、労基署が確認に来て、労働条件通知書の提示を求められることがあります。
そこで「出していません」となると、是正勧告や指導を受ける可能性が高くなります。
また、労基署対応は会社の負担が大きいです。
「忙しいのに資料を揃えないといけない」「社内で説明が必要になる」「採用活動にも影響する」など、想像以上に疲弊します。
労働条件通知書を出していないと起こること②:未払い残業代が一気に発生する
通知書を出していない会社で特に多いのが、残業代トラブルです。
例えば、
- 給与に残業代が含まれていると思っていた
- 役職だから残業代は不要だと思っていた
- 固定残業代のつもりだったが説明していない
- そもそも所定労働時間や休憩が曖昧
こうしたケースでは、退職後に「残業代を請求します」と言われた瞬間、会社が不利になります。
労働条件通知書がないと、
会社側が正しい条件だったことを証明できないからです。
結果として、
- 残業代が高額になる
- 遅延損害金が追加される
- 弁護士対応になる
- 他の従業員にも波及する
という流れで、経営リスクが一気に増大します。
労働条件通知書を出していないと起こること③:「話が違う」で早期離職が増える
採用が難しい時代、入社後すぐに辞められるのは会社にとって大きな損失です。
実際、早期離職でよくある原因は、
- 給与(基本給・手当)の認識違い
- 休みが思ったより少ない
- 早出や残業が多い
- 試用期間の扱いが不透明
- 雇用形態(正社員・契約社員等)が曖昧
といった「条件のズレ」です。
労働条件通知書を交付していれば、入社前に条件をすり合わせできます。
逆に交付しないと、従業員側は「そんな話聞いてない」となり、関係が悪化します。
労働条件通知書を出していないと起こること④:解雇・退職勧奨・配置転換が揉める
会社の都合で退職をお願いしたい場面(退職勧奨や解雇)や、配置転換を命じる場面では、「契約内容」が極めて重要になります。
例えば、
- 勤務地の定めがない
- 職種の定めがない
- 試用期間中の本採用判断基準がない
- 更新の有無(有期契約)が曖昧
こうなると、会社が正当な対応をしても「不当だ」と言われやすくなります。
労働条件通知書は、会社を守るための土台です。
土台がないまま対応すると、後から必ず揉めます。
労働条件通知書を出していないと起こること⑤:助成金で不利になる可能性も
助成金申請では、就業規則だけでなく、
- 労働条件通知書(雇用契約書)
- 労働者名簿
- 出勤簿
- 賃金台帳
などが確認される場面があります。
労働条件通知書が整備されていないと、審査の過程で「雇用管理が曖昧」と見られ、追加資料を求められたり、最悪の場合は要件を満たせず不支給となることもあります。
助成金を活用する会社ほど、雇用書類は必須です。
書面交付が必要な「絶対明示事項」とは?
労働条件通知書で特に重要な項目は、次のような内容です。
- 契約期間(有期か無期か)
- 更新の有無、更新基準(有期の場合)
- 就業場所・業務内容
- 始業終業時刻、休憩、休日、残業の有無
- 賃金(基本給・手当・締日支払日・計算方法)
- 退職に関すること(解雇含む)
これらは「必ず明示すべき事項」とされ、会社が曖昧にするとトラブルになりやすい項目です。
労働条件通知書は「会社を守る書類」です
労働条件通知書というと、従業員のためのものと思われがちです。
もちろん従業員の安心のためでもあります。
しかし、実務で痛感するのは、労働条件通知書がない会社ほど、
- 退職時の揉めごとが多い
- 未払い残業代の請求が起きやすい
- 労基署対応が増える
- 採用しても定着しない
という傾向がはっきり出ます。
つまり、労働条件通知書は会社が安定して経営するための必須書類です。
まとめ:労働条件通知書を出していないと、トラブルは確実に増えます

労働条件通知書を交付していないと、次のような問題が起こります。
- 労基署から是正勧告・指導の対象になる
- 未払い残業代請求で会社が不利になる
- 「話が違う」で早期離職が増える
- 解雇や配置転換が揉めやすくなる
- 助成金申請でも不利になる可能性がある
特に従業員が増えてきた会社ほど、早めの整備が重要です。
社会保険労務士渡邉事務所では「労働条件通知書の整備」もサポートしています
労働条件通知書は、テンプレを配って終わりではなく、
会社の運用に合っている形で作ることが重要です。
- 固定残業代の設計
- 手当の整理(みなし・役職・資格など)
- 試用期間・契約更新のルール整備
- 就業規則との整合性チェック
このあたりまで整理すると、労務トラブルの芽をかなり減らせます。
「うちは今のままで大丈夫かな?」と不安な方は、お気軽にご相談ください。
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- 労働条件通知書を出していないと、すぐに罰則がありますか?
-
すぐに罰則が適用されるケースは多くありませんが、法律上は違反となります。
労働条件の明示(特に書面交付が必要な項目)をしていない場合、労基署の調査や従業員からの申告をきっかけに、是正指導の対象になり得ます。
実務上は「指摘されて整備する」流れが多いですが、トラブルが起きた時に会社側が非常に不利になります。 - 絶対的明示事項って、最低限なにを書けばいいですか?
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最低限、次の内容は必ず明示しましょう(重要項目は書面が必須です)。
- 契約期間(有期か無期か)
- 就業場所・業務内容
- 始業終業時刻、休憩、休日、残業の有無
- 賃金(基本給・手当・計算方法・締日支払日など)
- 退職(解雇の事由を含む)
これらは「言った・言わない」が起きやすいポイントなので、書面で残すことが最大の防御策になります。
- 「変更の範囲」は労働条件通知書に書かなくても大丈夫ですか?
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法律絶対に書かなければならない項目ではありませんが、基本は入れておくのが安全です。
変更の範囲がないと、将来の配置転換や異動のときに- 「契約と違う」
- 「そんな話は聞いていない」
となり、揉めやすくなります。
特に、事業拡大・人員配置が変わる可能性がある会社ほど、最初から入れるのがおすすめです。 - 「変更の範囲」はどう書けば無難ですか?
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迷ったら、以下のような書き方がシンプルで使いやすいです。
(例:勤務地)
就業場所:〇〇事業所
(変更の範囲:会社の定める事業所)(例:業務内容)
業務内容:〇〇業務
(変更の範囲:会社の定める業務)ただし、小規模で転勤の予定がない会社が広く書きすぎると不信感につながることもあるため、実態に合わせた表現に調整するのが理想です。
- 労働条件通知書と雇用契約書は何が違うのですか?
-
労働条件通知書は会社が条件を明示する書類、雇用契約書は双方が合意する契約書です。



